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超高齢者のBFRトレーニングは

  高齢者におけるフレイルは大きな問題となっており、筋力トレーニングの必要性が叫ばれています。しかし一方で筋力トレーニングは関節への負担があるほか、運動中の血圧を高めてしまうこともあり、慎重な適応が必要であることも指摘されています。 高負荷を避けることのできるBFRトレーニングは高齢者にとって有効だとされますが、超高齢者ではどうでしょうか。 変形性膝関節症のある99歳の患者を対象に、BFRトレーニングを週3回、合計24セッション行った研究があります。(※1) その結果、外側広筋の断面積が12%、筋厚が8%増加しました。完全に血流を制限する圧力は右脚で170mmHg、左脚で150mmHgであり、運動時はそれらの半分の圧力で行いました。つまり右脚は85mmHg、左脚は75mmHgということです。 動作は椅子に座った状態でアンクルウェイトを装着し、10~15回を3セット、インターバルは1分で行いました。15回3セットができるようになったら、次のセッションでウェイトを増やしていきます。 なお被験者はトレーニング開始2週目に尿路感染症になってトレーニングを1週間中断していますので、それがなければもっと良い結果が出ていたかもしれません。 99歳を対象にこれだけの結果が安全に出せたということは、超高齢者のフレイル予防・治療にもBFRトレーニングが役立つということが言えそうです。 67~92歳を対象にした研究でもBFRトレーニングによって平均7.5%の筋断面積増加が起こっており(※2)、高齢者を対象にした今後のさらなる研究が待たれます。
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BFRトレーニング時に摂取したいサプリメントは

BFR(血流制限)によって、低酸素状態が起こります。そして虚血再灌流障害によって組織がダメージを受けるのですが、筋肥大に必要なダメージは得たいものの、健康に摂って悪影響の出るようなダメージは避けたいものです。 虚血再灌流障害によって活性酸素が発生し、組織に傷害が起こります。これによってタンパク質やミトコンドリアの劣化が起こるのですが、それを「カルニチン」が防げるという報告があります。(※1) また神経障害についてもカルニチンあるいはアセチルカルニチン(ALC)のプロテクト作用が認められています。カルニチンにはスカベンジャーとして活性酸素を除去する作用もあるようです。(※2, ※3 ハードトレーニングにおけるカルニチンの筋保護作用は知られていて、クレアチンキナーゼの減少や(※4)、エクササイズに伴って起こる低酸素状態や筋ダメージ、筋肉痛などに対する効果が認められています。ミオグロビンやマロンジアルデヒドの漏出減少も起こるようです。(※5, ※6) これらの効果を得るためには、一日1~2gのカルニチン摂取で十分なようです。(※7) カルニチンは血管内皮細胞が正常な機能を果たすためにも必要とされ(※8)、NOを発生させて血管を拡張する際にも必要な栄養素となります。(※9, ※10) 一日2gのカルニチンを14日間に渡って摂取したところ、抗酸化能力が高まって筋ダメージが減り、バスケットボール選手を対象にした研究でも同様の結果が出ています。 (※11, ※12) ただし一度にカルニチンを摂取すると、下痢することが大半です。一回の摂取量は500mg程度に抑え、それを数回に分けて摂取するようにしたほうがいいでしょう。 なおアセチルカルニチン(ALC)の場合は吸収が良いため、あまり下痢することもありません。ALCは集中力を高める作用もあるため、トレーニングの45分くらい前に2~3gを飲むことでトレーニング効果を高めることができます。

BFRトレーニング 追い込まなくても効果はある?

  一般的なウェイトトレーニングにおいては、それほど追い込まなくても十分に効果が期待できることが最近の研究でも確認されてきました。ではBFRトレーニングではどうでしょうか。 トレーニング非経験者の男性17名を対象に、20%1RMでBFRレッグエクステンションを行わせた研究があります。(※) 全部で4セットやりましたが、「すべて限界までやる群」と、「30回→15回→15回→15回で終える群」とで比較しました。 セッションは全部で14回です。これは5日間を1ブロックとして、間に10日間のインターバルを挟み、2ブロックを行いました。つまり最初の5日間で7セッション、10日間空けて、次の5日間でさらに7セッションということでしょう。 その結果、どちらの群もTypeⅠ繊維の筋核数(12~17%)とTypeⅡ繊維の筋核数(20~23%)が増加しました。またTypeⅠ(92~134%)およびTypeⅡ(23~48%)どちらの衛星細胞数も増加しました。 さらに大腿直筋と外側広筋のサイズがどちらも5~10%増加したのですが、限界までやる群はTypeⅠ繊維の断面積が減少していました。 また筋力についてはどちらも一回目のブロック後に低下しましたが、二回目のブロック後には6~11%増加しています。 資格取得講座でも「30回→15回→15回→15回」のプロトコルを推奨していますが、ここでは20%1RMよりも重い重量でやることが多く、受講者の皆さんはかなりキツイと感じたはずです。 20%1RMでしたらそうハードではなく、多くのクライアントに無理なく行っていただけることでしょう。 またこの研究では一日1回以上の高頻度でも効果を出すことができると判明しました。ただし途中で低下もしているので、効果が出るまでにある程度の時間が必要になってくると思われます。 どうしてもトレーナーの多くはキツイ方法をクライアントに行わせて「やった感」を醸し出そうとしがちなのですが、軽いトレーニングで最大の効果を出してあげるのがトレーナーの腕の見せどころでもあります。 20%1RMでの30回→15回→15回→15回、そして高頻度。ぜひお試しください。 ※: Frequent blood flow restricted training not to failure and to failure induces simila

BFRトレーニングと有酸素運動の組み合わせは

  BFRトレーニングは血流を制限して軽めの重量で行うウェイトトレーニングと定義されます。ウェイトトレーニングといえば一般的に無酸素運動なのですが、軽めの重量の場合はレップス数が多くなるため有酸素運動的な意味合いも含まれてきます。 ただしBFRの場合は軽めの重量でも酸素利用が少なくなるため、強制的に無酸素運動となり、速筋繊維が優先的に使われます。 では「軽めのウェイトトレーニング」ではなく、最初から有酸素運動にBFRを組み合わせた場合はどうでしょうか。 2019年10月に発表されたシステマティックレビュー(※1)によれば、12本の論文によって「BFR+有酸素」の効果が実証されており、8本の論文によって長期における代謝の改善が認められています。 また15本の論文によって血行動態の改善が示され、神経と筋肉、および代謝における改善が起こったとされています。 そしてこれらの論文によれば被験者はBFRを継続可能で(BFRの研究において途中で脱落した人が少ない)、健康に与える悪影響もなかったため、肥満者や高齢者においても安全に実行できるトレーニング法だとされています。 では論文の中からいくつか抜粋して紹介しましょう。自転車こぎ運動において回転数を固定し、最大酸素摂取量の20%か40%、60%になるように強度を調節したところ、20%の強度でも酸素消費量が非常に高まったことが示されています。(※2) また3分間のBFRウォーキングを5セット(インターバル1分)で行ったところ、EPOC(運動後の酸素消費量増加)の明らかな増加がみられています。(※3) 40%Vo2MAXでBFRによる自転車こぎ運動を15分行わせたところ、非BFR群に比べて大腿四頭筋の筋肉量と筋力の増加、Vo2MAXの増加がみられています。これは心臓に問題を抱えている被験者でも同様でした。(※4, ※5) ウェイトを扱う場合、基本的に脚のBFRは短めの時間で終わらせることを推奨しますが、脚にベルトを巻いて行うBFR有酸素運動をIntermittent(3分を5セットなど)で行う方法ならば、比較的安全に行えるかもしれません。 ※1: Acute and Chronic Responses of Aerobic Exercise With Blood Flow Restriction: A Systematic Revie

BFRトレーニングと酸化ストレスの関係

  血流制限により虚血再灌流障害が起き、酸化ストレスが発生するということは資格取得講座を受けた方ならご存知だと思います。では普通の高強度トレーニングと比べて、酸化ストレスの割合は高いのでしょうか。 身体活動が活発な男性27名(ウェイトトレーニングは未経験)を対象に、8週間に渡ってトレーニングを行わせた研究があります。(※1) 通常トレーニング群はバーベルカールを75%1RMで6セット、90秒のインターバルで週3回行います。 BFRトレーニング群は動脈閉塞圧の50%(平均107~108mmHg)でやる群と、動脈閉塞2圧の100%(平均232mmHg)でやる群とに分けました。 通常群もBFR群も各セット、限界まで行うようにしました。 その結果、どの群も同様に筋力と限界までのレップスが増加しています。 TRADが通常トレーニング、PRが50%圧、TRが100%圧。 そしてグルタチオン(GSH/GSSG比)や白血球のアポトーシス(MMPとカスパーゼ-3)を測定したところ、通常トレーニングや100%圧で酸化ストレスが大きくなり、50%圧では酸化ストレスはあまり起こらないことが判明しました。 そして筋力やボリュームロードは同程度に向上しているわけですから、軽い圧でのBFRは健康的に筋肉を鍛えるのに役立つということがわかります。 同様の研究は他にもあり、30%1RMで軽い圧でのBFRは酸化ストレスを高めず(※2)、高強度のトレーニングは酸化ストレスを高め(※3, ※4)、圧の高いBFRもやはり酸化ストレスが高める(※5, ※6)ようです。 軽い圧でのBFRトレーニングの普及によって、高齢者の健康的なフレイル改善が期待できることでしょう。

BFRはテストステロンも増やす?

  筋肥大や筋力向上において有効とされるホルモンの代表が、テストステロンと成長ホルモン、そしてインスリンです。BFRトレーニングで成長ホルモンが多く分泌されることは知られていますが、テストステロンとはどうでしょうか。 25名の若い男性を対象に、非BFRと動脈圧の40%でのBFR、動脈圧の70%でのBFRを72時間空けてそれぞれ行い、血中乳酸濃度や成長ホルモン、テストステロン、IGF-1レベルを測定した研究があります。(※1) なお動脈圧の40%は平均で78.8mmHg、70%は平均で137.8mmHgでした。 使用重量は30%1RM、レッグエクステンション&カールを6セット行い、各セットは15レップス、ポジティブとネガティブどちらも3秒かけて行いました。インターバルは1分です。 その結果、70%圧でのBFR群で成長ホルモンとテストステロン、そしてIGF-1の顕著なレベルアップがみられました。 IGF-1はインスリン様成長因子のことで、インスリンに構造が似ており、これも名前の通り「成長」を引き起こすホルモン様物質です。 この図の通り、70%圧だとIGF-1が顕著に高まり、テストステロンは40%圧でも十分に高まっていることがわかります。 なお、もちろん成長ホルモンも高まっており、平均78.8mmHgでも十分であることが示されています。被験者が若い男性であることから、強めの圧に反応しやすいということも考えられます。 今回は若い被験者でしたが、高齢男性ではどうなのかも興味の持たれるところです。今後の研究展開に期待しましょう。

BFRトレーニングと糖尿病の関係

糖尿病患者はインスリンの働きが悪いため、筋肉量が減ってサルコペニアとなる可能性が高いと言われます。では糖尿病患者にとって、BFRトレーニングは有効な対策となるのでしょうか。 BFRトレーニングと糖尿病の関係は BFRトレーニングは物理的な筋収縮によってGLUT4のトランスロケーションを促し、ブドウ糖の取り込みを高めることが示されています。 またmTOR/p70s6kとp38MAPK/PGC-1αシグナル伝達経路を活性化することにより、タンパク合成とミトコンドリアのバイオジェネシスを促進することも知られています。 これらはどちらもⅡ型糖尿病患者にとって良い影響があると考えられ、また筋肉内脂肪の酸化(エネルギーとして燃焼)を促進することで脂肪酸毒性も減少できると思われます。 そしてADPとATPの比率を変えてAMPKを活性化し、ミトコンドリアにおける脂肪酸参加を促進して筋肉内脂肪を減らす効果をさらに高めていきます。 以上を図で示したものが、次のイラストとなります。(※1) 実際にBFRサイクリングを週3回、6週間やることでGLUT4とNOの活性が増加して糖の利用が増加したという報告(※2)や、週2回のBFRトレーニングを8週間行うことでインスリンレベルとHOMA-IRが改善したという報告(※3)、メタボ患者が3ヵ月のBFRトレーニングを行ったところ、HbA1cが10%減ってLDLも8%減少したという報告(※4)もあります。 運動不足に伴って、糖尿病患者はこれからさらに増えてくると思われます。その対策としてBFRトレーニングが脚光を浴びる日も近いかもしれません。