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BFRトレーニングと酸化ストレスの関係

 血流制限により虚血再灌流障害が起き、酸化ストレスが発生するということは資格取得講座を受けた方ならご存知だと思います。では普通の高強度トレーニングと比べて、酸化ストレスの割合は高いのでしょうか。

身体活動が活発な男性27名(ウェイトトレーニングは未経験)を対象に、8週間に渡ってトレーニングを行わせた研究があります。(※1)
通常トレーニング群はバーベルカールを75%1RMで6セット、90秒のインターバルで週3回行います。
BFRトレーニング群は動脈閉塞圧の50%(平均107~108mmHg)でやる群と、動脈閉塞2圧の100%(平均232mmHg)でやる群とに分けました。
通常群もBFR群も各セット、限界まで行うようにしました。

その結果、どの群も同様に筋力と限界までのレップスが増加しています。

TRADが通常トレーニング、PRが50%圧、TRが100%圧。

そしてグルタチオン(GSH/GSSG比)や白血球のアポトーシス(MMPとカスパーゼ-3)を測定したところ、通常トレーニングや100%圧で酸化ストレスが大きくなり、50%圧では酸化ストレスはあまり起こらないことが判明しました。
そして筋力やボリュームロードは同程度に向上しているわけですから、軽い圧でのBFRは健康的に筋肉を鍛えるのに役立つということがわかります。

同様の研究は他にもあり、30%1RMで軽い圧でのBFRは酸化ストレスを高めず(※2)、高強度のトレーニングは酸化ストレスを高め(※3, ※4)、圧の高いBFRもやはり酸化ストレスが高める(※5, ※6)ようです。

軽い圧でのBFRトレーニングの普及によって、高齢者の健康的なフレイル改善が期待できることでしょう。

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